エネルギーと環境の世界統計
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メタン排出を見落とすのは、燃料の「入口」だけを見ているからだ

エネルギーと環境について、世界の統計を定点観測する

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メタン問題をエネルギー統計から読み直す

メタン排出量を考えるとき、まず思い浮かびやすいのは、天然ガスの生産や輸送、石炭採掘、石油の掘削といった化石燃料の現場だろう。ところが、エネルギーと環境の関係を統計で追うと、別の盲点が見えてくる。燃料が何であるかだけでなく、どのような設備で、どの産業が、どの規模で使っているかを見なければ、排出の実態に近づけないということだ。

メタンは、二酸化炭素とは異なる経路で大気に入る。燃料の採掘・処理・輸送に伴う漏出だけでなく、燃焼が不完全になる場面、燃料の保管や処理、廃棄物や農業など、エネルギー利用の周辺にも関係する。したがって、エネルギー統計に燃料消費量が記録されていても、それだけではメタン排出量を直接読み取れない。

日本の統計を見るうえで重要なのは、エネルギー転換が「大規模な発電所」だけで起きているわけではない点である。林野庁の調査によれば、木質バイオマスをエネルギーとして利用する事業所は、2024年に全国で1,327事業所だった。そのうち、ボイラーのみを所有する事業所は1,044事業所である。木質バイオマスの利用は再生可能エネルギーの一部として語られやすいが、燃料を集め、乾燥させ、保管し、燃焼させるまでの過程は、単純な「再生可能か、化石か」という二分法では捉えにくい。

「再生可能」と「排出がない」は同じではない

再生可能エネルギーを増やすことと、温室効果ガスの排出をすべてなくすことは同じ意味ではない。特にメタンについては、燃料の種類だけでなく、設備の状態や運転方法、燃料の水分、保管期間、点検体制など、現場の条件が影響する可能性がある。

もちろん、手元の統計だけから個別事業所のメタン排出量を計算することはできない。しかし、統計が示している事業所数や産業別の分布は、どこに測定や報告の仕組みが必要なのかを考える手がかりになる。

2024年の木質バイオマス利用事業所を産業別に見ると、製造業は453事業所だった。これは、木質バイオマスが発電だけの問題ではなく、製造現場の熱需要とも結び付いていることを示す。熱を得るためのボイラーが各地に分散しているなら、排出管理もまた、少数の大型施設だけを対象にした制度では十分でない場合がある。

統計から見える項目2024年の確認値読み取れる論点
木質バイオマスを利用する事業所1,327事業所利用が複数の現場に広がっている
ボイラーのみを所有する事業所1,044事業所熱利用設備の把握が重要になる
製造業の利用事業所453事業所産業用熱需要との関係を見なければならない

輸入燃料の統計にも境界がある

エネルギー起源の排出を読む際には、国境も盲点になる。資源エネルギー庁の統計によれば、原油輸入量は2023年に147,661,066キロリットルだった。この数字は、国内に入ってきた原油の規模を示す。一方で、採掘地から輸送され、国内で精製され、最終的に製品として使われるまでの過程で、どの場所からどれだけメタンが排出されたのかは、この輸入量だけでは分からない。

つまり、国内の排出統計だけを見れば、海外の採掘・輸送段階が視野から外れる。反対に、輸入量だけを見ても、国内の設備や利用現場で起きる排出は把握できない。エネルギーの流れは国境を越えるのに、統計はしばしば国境の内側で区切られる。このずれが、エネルギー起源のメタンを小さく見せたり、責任の所在を分かりにくくしたりする。

必要なのは「燃料別」から「経路別」への転換

メタン排出を見落とさないためには、燃料別の集計に加えて、採掘、加工、輸送、保管、燃焼、廃棄という経路ごとの把握が必要になる。木質バイオマスであれ化石燃料であれ、どの段階を測っているのかを明示しなければ、異なる統計を単純に比較することはできない。

日本の読者にとって大切なのは、「再生可能エネルギーだから安心」「化石燃料だから問題」という短い結論にとどまらないことだ。見るべきなのは、燃料がどこから来て、どの設備で使われ、どの産業に分布し、統計上どの範囲まで排出が数えられているかである。

世界のメタン排出を考えるとき、焦点は燃料の名前だけではない。エネルギーの入口から出口まで、そして国境を越える流れまで追跡できる統計があるか。そこに、これからの環境情報の質を左右する盲点がある。

出典

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004045593

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0004045568

https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003171993